進化する営業トーク。マンガ制作サービスで磨かれる伝えるチカラとは

interview2024.08.04

介護施設の日常をコミカルに描き、株式会社第一興商の介護予防システムを紹介するマンガ「ありがと!らいふさん」は、文章よりも親しみやすい表現と、サービス内容をわかりやすく伝える営業活動の支援ツールとして活躍しています。

今回は、同社エルダー事業部部長の大坪さんと、マンガ制作担当者の小倉さん、レジカスタジオ代表の小崎に、「ありがと!らいふさん」の制作背景と、ビジネスにおけるマンガの効果についてお話を聞きました。(以下、敬称略)

右:株式会社第一興商 エルダー事業部 部長 大坪さん、左:エルダー事業部 小倉さん
右:株式会社第一興商 エルダー事業部 部長 大坪さん、左:エルダー事業部 小倉さん
※今回制作したマンガ 「ありがと!らいふさん」

介護施設の現場ならではのお悩みに寄り添ったストーリーで、介護業界向けサービスをマンガで表現しました。ただのPR・サービス紹介ではなく、読んだ後に思わず明るい気持ちになるコミカルな演出が特徴です。

マンガで伝える介護予防システム 

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今回PRマンガを制作した「FREE DAM LIFE」は、どのような商品でしょうか。
大坪:
弊社、第一興商は通信カラオケのDAMを扱う企業です。介護保険制度が始まった翌年(2001年)に、うたと音楽のチカラで“楽しみながら継続できる”、高齢者の機能訓練や介護予防に役立つ生活総合機能改善機器 「DKエルダーシステム」をリリースしました。今回制作したマンガでは「FREE DAM LIFE(DAM – F850)」という機種を紹介しています。
DKエルダーシステムは、現状約2万7千施設への導入が進んでいますが、導入を見込める施設は9万施設ほどあると考えており、弊社の成長事業として積極的に活動しています。
株式会社第一興商 本社社屋外観
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マンガを活用することになったきっかけをお聞かせください。
大坪:
エルダー事業が始まって23年が経ちます。事業開始当初から介護市場は3年に一度介護報酬の改定があったり、弊社にとって未経験の市場だったりといった理由から、難しい市場だと言われていました。
また、サービスが多様化しているため、従来の営業ツール(販促物や紹介動画)だけでは十分に説明できず、伝えることに課題がありました。
営業担当者が難しいと感じていることは、その先のお客様にも伝わりません。そこで、社内や販売代理店様の「伝える力」を磨くことを重視してマンガ制作に取り組みました。
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レジカスタジオへの依頼を決めた理由をお聞かせください。
小倉:
マンガをPRに使うことが決まり、マンガ制作サービスを行う数社に見積もりを取ろうとしたところ、同じ部署のメンバーが2023年の夏に『ワールドビジネスサテライト』という番組を見ていたことで、レジカスタジオを知りました。関連事業にトキワ荘プロジェクトがあることから、柔軟なマンガ制作が可能だと感じました。
トキワ荘プロジェクトとは

トキワ荘プロジェクトは、レジカスタジオ運営の「LEGIKA」による、本気でプロの漫画家を目指すクリエイターを支援するための総合プログラムです。 

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マンガ制作はどのような流れで行いましたか?
小崎:
通常は、クライアントと全くの白紙の状態からどういうマンガにするかを打ち合わせるところから始めます。ですが第一興商さんの場合は、初回の打合せ時からマンガの構想やセリフを用意してくださっていました。そこに、キャラクターを作り、課題をクリアして成長するストーリー展開を提案しました。
小倉:
部署内にマンガに詳しい社員がおり、ある程度の準備はできていましたが、みんな本格的なマンガ制作の経験はありません。弊社の強みをどう表現するかを考え、小崎さんはじめレジカスタジオの皆様のサポートを受けながら一歩一歩形にしていきました。
我々エルダー事業部は通信カラオケDAMを展開するエンターテインメント企業ですので、そうした知見とプロの表現技法を組み合わせて、お互いの良いところを取り入れて作品を完成できたと思います。
小崎:
第一興商さんから提供されたプロットやセリフが回を重ねるごとにブラッシュアップされていくのを感じていました。プロの漫画家でも難しいセリフの削減作業のポイントをすぐに理解し、修正にも対応してくださいました。それは、第一興商さんの伝えたい想いが終始ぶれなかったからこそできたことだと思います。
また、完成したマンガをどう使うかを最初から綿密に考えられていた点が特にすごいと感じました。さらに、第一興商さんは作品やキャラクターを愛してくれているので、それが良い作品作りに影響していると思います。
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営業トークが進化する!マンガで磨かれる伝える力
大坪:
具体的な課題は、十人十色になりがちな営業トークを簡潔にすることでした。マンガの制作段階でセリフから余分な部分を省き、営業トークとしてブラッシュアップすることで、営業担当者もわかりやすく簡単に伝えられるようになりました。マンガにすることで、現場での伝える力が磨かれる点も非常に大きなポイントです。
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完成した漫画を目にした時のお気持ちをお聞かせください。
小倉:
新しいことに取り組み、作品が完成したことに大きな喜びを感じました。ストーリーに関しては何度も慎重に検討し、細かい修正を繰り返してきたので特に達成感があります。
大坪:
テーマやセリフは最初からある程度形ができていたので、シンプルでわかりやすいものにすることを意識しました。その結果、営業トークの延長線上で伝えたいことが凝縮されて良いものに仕上がったと思います。
また、営業には相手の話を聞き、疑問に答える「間」が重要です。マンガの特徴にはフォントの違いや文字の大きさ、吹き出しのデザイン、キャラクター造形など、視覚効果から得られる情報の豊富さがあり、そこから感覚的に「間」の取り方を学ぶことができます。そのため、制作したマンガを読むことで商品の魅力の伝え方が自然に身につき、自分の思いをより伝えやすくなると感じています。
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小倉様は、マンガ制作に携わってどのように感じられましたか?
小倉:
私はマンガを読むのが好きでしたが、制作に関わることで見方が変わりました。4ページの作品を作るだけでもどの工程も気が抜けず、セリフやストーリーをブラッシュアップし続けた経験が、自分の成長に繋がったと思います。
「ありがと!らいふさん」第2話より
「ありがと!らいふさん」第2話より

マンガ動画で介護福祉の未来を拓く

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マンガを動画に再編集して配信されていますが、どのように活用されているのでしょうか。
大坪:
動画にすれば視聴回数が増えると考えて制作しました。そして、訴求にはチラシや名刺の裏を活用しています。名刺の裏に「実は僕が歌野 頼譜(※うたのらいふ)なんです」というメッセージを入れているんですよ。
他にも、マンガをうちわに印刷して配布もしています。営業担当者が「このQRコードからお悩み解決動画が見られるのでぜひご覧ください」という一言を添えて渡す取り組みも行なっています。
名刺とうちわ
左:名刺の裏面。キャラクターを活用して訴求している 右:配布したうちわ
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名刺の裏を利用して、マンガの登場人物になりきるアイデアがとても素敵です!他にも、マンガ化したいアイデアはありますか?
大坪:
介護業界では、少子高齢化で職員が不足しています。頼れるのは外国からの特定技能実習生です。インドには政府が約半分の49%出資している(民間51%)学校があり、そこでは日本で働きたいインドの看護大学卒業生が学んでいます。私たちは来日予定の特定技能実習生の候補者に向けて、「DKエルダーシステム」を活用した「音楽健康セッション」が実践できる音楽レクリエーションインストラクターの育成を行なってまいります。

日本の介護福祉士の教育課程にはレクリエーションが含まれておらず、実務でレクリエーションを負担に感じる日本人職員が多いです。そこで、インドの実習生にレクリエーションを学んでもらうことで、日本の介護福祉士の負担軽減と、実習生のスムーズな就業を同時に図るという目的があります。

例えば外国の方に介助を任せることに抵抗を感じる利用者様も、レクリエーションを通じてコミュニケーションが取れるようになると、お互いの心の距離も縮まり信頼関係が生まれ、安心します。日本人の苦手な部分を外国の実習生に担当してもらうことで、ウィンウィンな関係が築けるのです。次は、こうした解決策をマンガ動画にしたいと考えています。

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ありがとうございました!

(取材・文/松尾しのぶ)