共生マーケティング時代到来! 4P分析・4C分析から導く魅力の発信とは

column2023.08.24

マーケティングミックスとマッカーシーの4P

マーケティングのツールを複数組み合わせ、統合的にマーケティングの実態を捉えたのが「マーケティングミックス」という概念です。

商品を顧客に届ける際に、取り扱う商品の善し悪しから、価格をいかに設定し、どのように宣伝し、どの販売網で売るのかという点を複合的に捉え、理解する必要があります。

マーケティングミックスとは、価格戦略、PR戦略などの形で個別のマーケティング手法を切り売りして捉えるのではなく、複数のツールを統合的に捉えることに意議があります。

アメリカのマーケティング学者、エドモンド・ジェローム・マッカーシー(Edmund Jerome McCarthy)は、マーケティングミックスへの視点を、頭文字がPではじまる4つのワードで整理しました。

  • Product(製品)
  • Price(価格)
  • Place(流通)
  • Promotion(プロモーション)

4Pを使うことで、商品・サービスのマーケティング戦略を比較分析しやすくなります。

 

4P分析の事例

具体的なサービスについて、4Pでどう分析できるか見ていきましょう。

ヨドバシカメラ

  • Product(製品):都市部の大規模拠点駅前のリアル店舗とオンラインショップで、豊富な品揃えで電化製品等を販売、経験豊富なスタッフによる商品選びのサポートも充実
  • Price(価格):強力なバイイング・パワーによる割安な価格設定
  • Place(流通):システム投資を継続的に進めており、ECサイトとリアル店舗が一体となった在庫管理・流通管理を同業他社と比べて早期に展開、大規模流通倉庫から消費者の玄関まで自社配送網を使って迅速に配達できる
  • Promotion(プロモーション):駅前好立地による高い認知度獲得と、継続的かつ多様な広告の展開、徹底的に安さを強調

サービスの特性、価格設定、販促手法、立地戦略、流通網の整備などを複合的に捉えることで、狭い範囲でのマーケティング手法ではなく、複合的な企業戦略としてのマーケティングの実態が見えてきます。

この手法に対して、売り手側の視点で捉えすぎているのではないかという疑問がありました。よく知られているのが、ロバート・F・ロータボーン(Robert F. Lauterborn)の4Cという切り口ですが、ここでは省略します。

 

極限環境に耐える商品から見えるもの

SAYAMA works の挑戦

ネット社会が到来し、個人単位で素晴らしい商品・サービスを提供する方が現れ、多くの方とつながり、社会全体の潮流を変えることが珍しくない時代が来ています。

例えば、超軽量で極限の山岳レース環境にも耐えるバックパックをつくるSAYAMA worksという会社があります。代表者の方は、看護師の仕事もされながらその傍らで商品をつくられています(2023年9月から、SAYAMA worksの仕事に専念されるそうです)。

SAYAMA worksは、トランスジャパンアルプスレース(TJAR)という富山湾から駿河湾まで、北・中央・南アルプスを横断する山岳アドベンチャーレースに出場する選手に向けたバックパックを提供しています。

TJARは、一つ間違えれば命を失いかねない過酷な環境を乗りこえていくレースです。一方で、累積標高差が約27,000mとも言われる行程を短時間で乗りこえるためには、携行する荷物を極限まで軽くしなければなりません。

そのため、安全性、軽量性、機能性、快適性などの要素を高度にバランスさせないといけないのです。

SAYAMA worksは、大変小規模な運営体制ながらも、ユーザーであるTJAR出場選手と密にコミュニケーションを取りながら、試行錯誤を重ねて商品づくりを進めています。そこで生まれた開発力は、「人を助ける山道具」を中心理念として、レース用商品以外の一般商品にも反映し、ULと呼ばれる軽量アウトドアグッズを扱うショップや消費者に強く支持されています。

 

4Pマーケティング分析の限界

既存の4Pの分析では、SAYAMA works のようなユーザー体験と密につながる形で開発を進め、そうした姿勢をブランドの本質的価値として評価する消費者との関係性が浮かび上がってきません。

「テストマーケティングに基づいた小規模生産体制」と一言で片付けてしまうと、大事な部分が抜け落ちてしまうのです。

決してSAYAMA works に限った話ではなく、クチコミ主体で評価を獲得している飲食店やフリーランスのクリエイター、ガレージブランドのメーカー、体験価値を重視したホテル・施設、ニッチなBtoBサービスなどでも同じようなことが言えます。企業団体・出版社のニーズを汲んでマンガ制作を行う私たちLEGIKAも、同じことが言えるでしょう。

これらは、スマートフォンとSNSの利用形態が成熟してきた2010年代から、一般にも身近になってきたサービス類型です。

 

共生マーケティングの4C

遡ること1972年、経営学者の清水公一がある概念を提唱しました。

共生マーケティングを示す4Cです。

  • Commodity(企業と消費者が共につくる商品・サービス)
  • Cost(生産・流通・販売過程全体のコスト、社会全体でのコスト)
  • Channel(企業と消費者をつなぐチャネル)
  • Communication(共生のためのコミュニケーション)

オイルショックよりも前に、このような概念が発表されていたこと自体にまず驚きますが、インターネット社会の現代の市場環境に符合していることにも、改めて驚かされます。

SAYAMA works の事例を4Cに当てはめるとこうなります。

  • Commodity(共創商品):開発過程から消費者であるレース出場者やハイカーのフィードバックにより産み出され、今までにない軽量性と機能性を兼ね備えることで、レース出場者から一般のハイカーも含めて新しい次元の開拓に貢献する。
  • Cost(社会全体でのコスト):消費者と生産者・販売者がピンポイントでマッチし、無駄な生産を極限まで抑えたことで職人的な体制ながらも常識的な商品価格帯に抑えられ、消費者側にとっても、商品特性や機能を熟知したショップを通じて、強い賛同の下で購入に至るため、無駄な買い物を抑えられる。また、生産過程の合理化・製造ミス抑制や交換修理の可能性を追求して、流通過程全体での無駄を省いている。
  • Channel(チャネル):商品特性を熟知し、理解者・賛同者であるショップに限定した流通形態、あるいは流通量を抑えたオンライン販売。広告に頼らず、クチコミ主体での需要の拡大に留める。
  • Communication(コミュニケーション):工場のプランナー、職人、設計者(代表の佐山氏ら)、レース出場者・経験者等が密なコミュニケーションを取り、試行錯誤を重ねることで高い商品価値と価値理解を導く。

改めて見ると、4P分析が提唱された時代は、メーカーが卸に売り、卸が小売店に売りという単発的かつ一方通行な商流が前提となっていました。

今では双方向での情報のやり取りの下で、既存商品ではカバーできない領域でどう価値をつくっていくかが求められています。この共生マーケティングの4Cという点に着目して、いかに商品・サービスを売り出していくかを考えてみてはいかがでしょうか。

 

マンガを使った共生マーケティング

レジカスタジオでは、企業団体が提供したい価値に貢献するマンガ制作を行っています。

マンガというとマンガ誌に掲載されているストーリーマンガを想像されると思いますが、要素分解をしてみると、セリフと絵をキャラクターを主体にしてストーリー仕立てで演出するプレゼンテーション手法といえます。

これはビジネスでも通用する普遍的な表現方法です。動画よりも短時間で強いインパクトを与えられ、ソーシャルツールで拡散もしやすい特性を持ちます。

先の共生マーケティングの4C分析の切り口に合わせるのであれば、このような場面でお役に立てるかもしれません。

Commodity(共創商品)

メーカー

  • 消費者と一体となって、新商品によって、いかに高い価値を産み出していけるかをマンガを通じて体験的に示していく。
  • 小売店や代理店に対して、開発初期段階において商品の魅力の中核部分をプレゼンテーションしていく。

小売店

  • 尖った個性を持つ商品の良さ、魅力をピンポイントで紹介すると共に、消費者に対するアドバイザー・エバンジェリスト・インフルエンサーとしての理解度・一体度を高める。
  • 似たような興味関心を持つ層へと広く拡散を図る。

自治体・公益団体

  • 他人事となりそうな領域での分断を解き、共に行動することで全体の価値が高まっていくことを伝えていく。
  • お堅い文章になりそうなところで落差を設けることでインパクトを生み、親近感を持ってもらう。
日野市が策定する将来ビジョンをマンガ形式の「ストーリーブック」として具現化し、読者にとって自分事化している。作者も日野市在住者で、ワークショップを経て制作を行っている。

 

Cost(社会全体でのコスト)

一般企業

  • 提供する側と利用する側の間で、マンガ表現によって理解を埋め、高いマッチング精度をもたらす。
  • 高いマッチング精度の下で無駄を省き、余計な生産、余計な在庫、余計な広告、余計な人件費、その他余計なコストを抑えていく。

自治体・公益団体

  • 人手をかけたイベントなどに依存していた周知をマンガで代替してコストを抑えるだけでなく、自主的に取り組みに貢献するような積極的な理解者を増やしていく。

 

Channel(チャネル)

一般企業

  • 商品・サービスの理解者・賛同者の密度を高め、流通の効率を高める。
  • 自社が抱え持つデータを使って、読者の興味関心をかき立て、事業のファンや理解者を増やす。これまで届かなかった取り組みの受益者を増大させる。
博報堂生活総合研究所が30年間蓄積してきた定点調査データを生かし、マンガに変える取り組み例。普段気付かない社会変動の大きさを実感することができる。

 

Communication(コミュニケーション)

一般企業

  • 商品・サービスの理解度を高め、ロイヤリティの高い集団の形成を促し、魅力的な商品・サービスを提供できるようにする。

自治体・公益団体

  • 取り組み内容の言語化を促進し、市民やライトな賛同者からの能動的な参加姿勢を引き出す。

 

共生マーケティングの4Cの視点で、取り組みを推進される際には、レジカスタジオのマンガ制作をぜひご活用ください。